No.12 <Falling Water:落水荘 製作記>

 

 

 

第一回 このキットについて

Falling water「落水荘」ウッドモデル

1/100、1/200スケール  エディミー(?)

現代建築の祖としてル・コルビジェと供にその名が

必ず上がるのがフランク・ロイド・ライト。

そのライトの代表的建築物として最初に上がるのがFalling Water:落水荘(邸)ですね。

子供のころに美術の教科書で見たこの落水荘の写真はほんとうに衝撃でした。こんな家に住んでいるお金持ちがいるんだと。

米国ペンシルベニアの山奥にあるこのカウフマン一族の私邸(ロッジ)はライトに建築設計を依頼した父親からその所有権を継いだ息子さんのエドガー・カウフマンJrに

より地元の環境保全団体に敷地ごと寄贈され、現在は一般公開されています。

そのモデルとしてはLEGOのArchitectureシリーズが有名ですが所詮ブロック組み立てもの(後述しますがこれはこれで良いところがあります)。

それでも今ではプレミア価格で2~5万円もするこのブロックおもちゃには触手が伸びませんでした。

とは言え安価なペーパーモデルも出ていない(あるにはあるのですが飛び出す絵本レベルの様で)状況です。

無いなら自分でつくってしまえという方のハンドメイドの「Falling Water」の製作過程をつづったハードブックもある位です。このモデルは非常に精緻ですがまず一般人にまねができるレベルではありません(溜息)。

そんな折、日本のデザインメーカからポリスチレン素材のハウスキット、中国のメーカーからは薄い合板に精緻なレーザーカットでパーツが準備された組み立てキットがあると判明しました。

ウッドモデルの方は1/100と1/200の2種類がある様で(写真は1//100のもので今回作成する1/200のものとはちょっと異なる部分も.....単にスケールアップしているわけではないようで別メーカー製なのかまでは不明です)。

何とか手に入れたのが1/200スケールの今回のキットです。

まあ1/100キットの方は「国立西洋美術館の作成記」の如くこの1/200の組立てを十分に堪能してから気長に手に入れようと思います。

このキットの欠点は完成写真の如く焦点が建造物にのみ当てられており本来の自然の造形を取り入れ建てられたその立地を含めての現代建築「落水荘」の姿がちとおろそかになっています。

その点はレゴの勝ちですね(笑)。

 

今は組立図を見ながら建築モデル用の図柄シート等で外観をさらに近づけるか、手持ちのNゲージの樹木から使えそうなものを選んで植樹をしようかと.....構想ばかりを膨らませている次第(笑)。

えっ?週刊マイドールハウス、フロストンパラダイスに続いて未完の作品になるんじゃないかって......。いえいえ週刊マイドールハウスは少しお休みしているだけですって。

 

キットは落水荘周辺の敷地が等高線式パーツを積層して形成するようになっており、その地形パーツをまとめたパネルが5枚に落水荘自体のパーツをまとめたパネル2枚の計7枚の合板パネルに簡単な組み立てイメージが記されたシート(あまりに簡略すぎて事前のイメージトレーニングが重要だな、こりゃ...)のセットです。

それに少し濁った軟質塩ビのクリアーシートが一枚。どうもこれは組立後に内部にLED等を仕込んでライティングした時の効果用として敢て半透明シートにしているようです。

また今回お店がギフトとしてカッターナイフをセットしてくれました。

 

ご覧の様にスリットやパーツのはめ込み部、窓類は綺麗に打ち抜かれています。

そのカットラインも繊細に焼き切られ最小限の点接触部を残して(これをカッターで切り離す)各パーツがフレームにはまった状態になっています。

パーツ番号はレーザー出力の調整で表面にだけレーザー蝕刻されています。

サッシ窓類はブラス製エッチングで供給されればさらに良かったようにも思いますが仕上がりはご覧の様にこのスケールなら十分でしょう。

 

参考資料

このキットの製作に当たっては写真のハードカバー本を参考にしています。

精緻な落水荘のモデル製作過程を記録したこの本、実際の建屋もさもありなんといった形で石組み土台、建物の各パーツを一つ一つ実際の写真資料を参考に手作りで作り込みながら組上げていく様子が豊富な写真で確認できます。

今回の木製モデルにおいても省略された部分等の確認を含めて非常に役に立ちました。

 

 

第2回 ベースの制作

まずは敷地(ベース)の仮組です。

とにかく組立説明図が組立の各段階を追ったものではなく組立完成図にパーツ番号が明示されているだけなので各切り出したパーツの重ね合わせ位置等の調整確認が必要です。

この段階ではパーツは未だメンディングテープによる仮止め状態。

今回は岩盤渓谷が立地ということで川の部分にクリアーシートや波板君等を流用しています。うーん、でもこれじゃ湖だな.....

おいおい考えていきましょうか。

 

側面、背面はこんな感じです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このキットでは落水荘(写真は組立途中の建物)をそのまま置くだけで、あのテラスの下を落ちる滝はどこへやら。

これではあまりに悲しいので最終的にはスチレンボードで渓谷のベースをかさ上げして小さいながら滝を再現しようと思っています。

結局周りの地形の大改造は落水荘が出来上がってからということに。

 

 

 

 

第3回 落水荘の組立

第一階層(地階)の組立と(基本的な採用技法と改修箇所について)

落水荘部の組立

さあ建物の組み立てに入りましょう。

最初に2枚のパーツパネル表・裏に本塗装前にグロスメディウムを水で1:1に薄めた水性ニスでパネㇽの目止め処理をしておきます。

オリジナルのパネル自体、その裏表に張り合わせられた表層木質部は一見木目等はほとんど目立たないのですがここはひと手間かけておきます。

十分乾燥後にアクリル塗装を実施しました。

今回パネルシート②の裏がレーザーカッティングの煙でしょう、いぶされた様に汚れていましたのでオリジナルの合板パネルに近いアサヒペンのクリエイティブカラースプレー:クラッシックアイボリー(艶消し)で全面塗装しておきました。

基本的に落水荘のコンクリート製ベランダはこの色で行くこと。

 

まずは第一階層(地階)部分。

このパートは手を入れるポイント満載でした。

 

 

 

 

 

 

まずテラス下を向かって右から左前方行へ流れる川は池の様に浅い水面が覆っている写真が多いので波板君を切り出し置いています。

 

 

 

 

 

 

第二層(1階)のテラスを支える三枚の基礎は本来断面が上部に向かって広がる逆台形型なのですが今回この基礎パネルが載る最下層部のみ組石仕様で幅を持たせました。

後日出来れば張り合わせパーツを準備、両サイドに張って逆三角形に太らせることも考えましょうか。

 

またこの水面に繋がる階段も本来は吊り構造なのですがすがにそこまでの修正はできないのでオリジナルの背骨支柱部を極力カットし、両サイドにハウスモデル用手すりプラシートをステップ毎に張っていきました。

最後は最下層ステップをボール紙で拡張してあります。

 

オリジナルパーツ素組の階段

 

 

修正した階段部

 


壁面はどうする?

この落水荘は垂直の構造物が平石の積層組、水平に広がるテラス構造部がコンクリート打ち放しで作られ、この2つの要素の交互組み合せによって建物全体がリズミカルに構成されています。

最初この石組構造の壁面を適当なハウスモデル用の印刷シートで再現できないかと色々当たりましたが結局適当なものが見当たらず....

そこで今回はキットのスケールも考えて修正が容易なエナメル塗料による油絵風の塗装で再現することにしました。

タミヤのXF-24ダークグレイ、XF-23ライトブルー、XF- 12明灰白色等を薄め液を使わず(また容器下方に沈澱している顔料を)細筆でパネルに水平の短い線を描くように塗り付けていき、各色ずらしながらバランスよく(とはいえ適当に:笑)重ねていきました。まあそれなりにみえるでしょうか?

 

 

第二層(一階)構造部

写真で良く紹介される大広間になります。

 

 

 

 

 

 

 

以降の上部構造で再現されるベランダはコンクリート製で、そのエッジに丸みを持たせることが外観上の重要なポイントの一つです。

ここは電動ルーター等で根気よく丸みを出しながらアクリルパテ埋めも多用して一体感を出すようにしました。

また組み込まれた窓やドアのサッシは有名なチェロキーレッド。ここはタミヤのXF-7ブラッドレッドで代用しています。

組立のまま

ベランダ部のエッジ処理後

 


広間の床も大きな平石を組み合わた石張り床であることから今回少し柄のスケール感に難がありますが近似のパターンシートを置いてみました(色も違うんだよな....)。

結局テラス部は後から撤去.....

窓やドア部の裏側に切出したクリアプラ板をコロコロ系粘着剤を介して張り付けてあります。

 

天井には3連リボンLED(白色電球色)を張り付けてライティング効果を。実際は当時としてはまだ珍しい白熱電球色の蛍光灯だったとか。

写真は一本ですが最終的には並列2本の6LED仕様としました。

片方のコネクターリード線を短くカットし、もう一つのコネクター端子に半田付けすることで引き回しする回路を1組にスリム化しています(写真撮ったんだけどな......)

 

LEDのリード線は建屋の後部壁(崖側)なるべく目立たない床部に5㎜のドリルで各階を垂直貫通させた穴をあけ、崖の積層パネル部に横穴を開けて後部スペースに逃がしています。

今回は3か所の貫通孔にて

①一階応接室の3連LED2本の統合分

②二階・三階の各寝室3連LED1本の統合分

③西側グラスウォール棟のLED1本分

それぞれを丘陵部下部のスペースに取り出し、背部地面下で一つに統合しています。

 

南東のパーゴラ(日陰棚:語源は葡萄棚だそうな)もエッジを落とし、実際にはめ込まれているガラスを模してクリアのプラ板を貼り付けています。

 

 

 

 

 

このキットでは再現されていない第一層(地階)に続く階段のベランダ側に突き出た半円状のコンクリート壁はボール紙で再現しました。

 

 

 

 

 

 

 

第三層(二階)

床の仮置き状態です。

実際は写真の手前側、外部道路を挟んで崖(丘陵)に接続するパーゴラ風の複数梁の横の開口部から空中通路が伸び、丘陵はさんで建てられている客室棟に遊歩道で繋がっているのですがキットでは省略されてます。

この辺りは丘陵部の改造後、追加工事として空中通路、遊歩道の設置を考えようかなと。

 

第三層を前面から

 

第三層を後部から


またこの西棟側面から張り出した片持ち式のバルコニーに降りるⅬ字型の小階段と4層部(三階)の小さな張り出しは再現されていません。

適当に余った合板を切り出し再現しました。同様に背面の崖に伸びる三本の梁も自作で追加しました。

 

特徴ある階段は同じく室内階段パーツを切り出したパネルフレーム(プラモデルで言えばランナー?笑)を活用しています(まだ試作段階なんで.....ぽりぽり)。

 

 

第四層(三階)部

カウフマンJr.の寝室、書斎の第四層部。

この天井と床裏(二階天井)に個々3連LEDを1本づつ貼付け、ここもリード線を統合して地階から外に出しています。

もう一つの三層を貫く隣のグラスフォールの西側棟は背面壁に縦にリボン三連LEDを張り付けましたが点灯させると内部のLEDが丸見えなのでグラスウォールのクリアプラ板にはメンディングテープを裏張りして擦りガラス状にしました。

 

第四層までの落水荘建屋は一応完成。

各階のライティングを確認しました。

とりあえず地階のベースパネル前面、滝になる部分を一部切除し、その下に5㎜スチレンボード2枚で建物底上げ用の岩盤を模したものをかませています(形は後で修正しました)。

 

 

 

さあ、後は建物周りの地形の大改造と植樹、滝のリアル化です。

 

 

立地周りの改造

落水荘の基礎、裏の丘陵や東側橋等の造形をを5㎜スチレンボードの積層法で再現してみました。

このケースでもやはりパーツを切り出した後のパネルフレームはテンプレートとして役に立ちますので捨てないように(笑)。

崖部になる前面部はナイフでスパッと垂直に切り出すよりもはさみで少しづつカットしていくとつぶれ具合やぐちゃぐちゃのカット面がちょっと自然の岩面に見えます。

 

橋の部分も再構築です。

ご覧の通りに落水荘の基礎は1㎝(5㎜ボード2枚分)かさ上げしました。

 本当ならばこの倍はかさ上したいところですが..........

周囲全体の改造を考えるとこんなところでしょう。

手前の橋はスチレンボード2枚分の厚みで全長を短く作り直しです。

 

橋から地形を

 


滝のリアル化

滝は波板君の残りの表面にタミヤのウォーターエフェクト液をまず横一直線状に多めに置き、爪楊枝で下に引っ掻くように広げ一晩おいたものが写真の落水のベースです。

 

 

 

 

これをゆっくり波板君から剥がしてから滝の前面にカーテン状に貼付け、上部の落水エッジ部や川に落ちる下部、水面をホワイトの塗料で汚してみました。

 

 

 

 

 

 

 

塗装と植樹

Nゲージシーナリアイテムの永らくお蔵入りしていた樹木類(針葉樹・広葉樹)をまずは適当に配置してみました。

 

 

 

  

 

木々の下草はシーナリーパウダーを。

 モーリンのカントリーグラスNo.6 CS-06(ブラウン)を使っています。

左上の一角(スイングさせた白い部分)は9Vバッテリーの取り換えのために取り外しできるようにしています。

また背面木質パネルに穴を開けスライドスイッチをはめ込んでこれに電飾回路を結線することでライティングのon/offができるようにしています(小さな突起がスライドスイッチ部)

 

落水荘背面から伸びる筒状通路と客室棟へ続く遊歩道を疑似配置してみました(本当は客室棟に向かって登り勾配の屋根付きの歩道なんですけどね)。

ここは敢えておまけ施設として塗装もしないでおいておくことにしようかと...

 

 

 

3㎜スチレンボードの切り出し小片(1mm x0.5mm)を重ねていく手法で当初の設計図にある対岸の水辺へのアクセス階段をつけてみました。

 

第二期工事はベランダ床の敷石パターンの追加、渓谷(川)の手前側のベースプレートを切除しさらにそのまま土台をかさ上げして第二の滝をつけようかと......

(もうアクリルケ ース準備してるからいつになるか)

 

対岸より落水荘を望む(なんてね)

 

 


第二の滝を追加

5㎜厚のスチレンボード(250x250㎜)3枚で全体を嵩上げします。

写真等を参考に手前の川の部分に合わせてスチレンボードを切り出し加工、重ねて滝を追加してみました。

第二の滝はもう少しちょろちょろにするかな?

これじゃ入り出の流量が合わない...笑。 

 

手前の第2の滝の準備

 

ウォーターエフェクトによる落水の準備


各側面に飾り板を張ってとりあえず完成と。

レゴに倣ってネームプレートも張りましょうかね。