11号室 世界の原子力船展示室

この展示室では世界各国で建造された著名な原子力推進艦船のコレクションを展示しています。

 


           USSR 

Ministry of Transport of the Russian Federation 

Ле́нин  

LENIN

ソビエト連邦時代の1959年、海運省がアドミラルティー造船所において竣工させた世界初の原子力水上船であり、初の原子力砕氷艦でもあるレーニン 1万9240t。

当時のソ連砕氷艦の主任務の一つが閉ざされた北海氷原を切り開き、通常輸送船の航路の確保に任ることでした。

原子力潜水艦搭載用加圧水型原子炉OK-150を3基搭載し、原子炉による加熱蒸気で4基の蒸気タービンを回して発電し、その電力で電気モーターを回す3軸推進で速力19.7ノットを誇る当時としては珍しい推進システムを搭載していました。

砕氷能力も2.5mの定着氷なら3ノット超える速度での連続砕氷航行が可能でした。

船体中央部に聳える太いマストは蒸気タービンの吸排気シュノーケル塔で、形や位置は異なりますが原子力船むつやドイツのオットーハーンにもみられます。

ただ当初搭載されたOK-150原子炉には緊急炉心冷却装置がなかったことや使用部材の耐久性の問題から頻繁にそれらの部材の交換等メンテナンスが要求され、そのたびに原子炉を停止する必要があるなどの維持管理コストに加え、安全設計上の問題を内在していました。

1965年2月の定期メンテナンスにおいて原子炉燃料棒(集合体)の交換作業中、操作手順ミスから原子炉一基が炉心内冷却水の喪失状態となり原子炉を損傷する大事故を起こしてしまいます。

この形式の原子炉は他の搭載艦船でも度々事故を起こしており、この事故後の1966年にレーニンは4年の歳月をかけてこの初期型原子炉3基全てを2基の新型原子炉OK-900に交換する大改造を実施、その2年後の1972年に再就役にこぎつけます。

本艦は再就役後も北海航路の確保に活躍し、砕氷ラッシュ船とのコンビによる高緯度直進航路を切り開くなどの功績によりレーニン勲章を受章。以後次々と建造された原子力砕氷艦(合計9隻)や通常動力型砕氷艦による通年北海航路開設・維持の先駆的役割を果たしました。

1989年長年の氷原航海による船体の摩滅老朽化により砕氷艦としての退役がきまり、母港のムルマンスクにて係船後、2005年からは博物館となっています。

 

このモデルについて

HANSAの1/1250 スケールのダイキャストモデルです。

届いてビックリ、少し大きめに見えました(こんな?)。

モデルの船体長を実測すると107mm、実船の船長が134mですからほぼ1/1250スケールなんですね。砕氷艦の意外な大きさにちょっとびっくりです。

裏側にMade in West Germanyと刻印がありますので相当古いモデルですが塗装にクラック等のダメージはないものの白色は全面的に黄変しているように見えます。それとも最初からクリーム色だったのでしょうか(そんな色で写っている写真もありますから)。

全体的に丁寧な厚塗り塗装が施されていますが最後に塗装されたデッキの塗装被りが著しいので上部構造の塗装をやり直しました。

あとは船首のポールと船首船楼から延びるデリックブームを追加。レーダーマスト等のアンテナ類を追加してみました。

最後に新造時の姿に従って喫水線位置にホワイトラインを0.5㎜のアートラインテープで再現しています。

あっ、ブリッジ左右の赤と緑の舷灯を復活し忘れてる......

 

やっと当展示ルーム、当初の計画通りに収蔵品が揃いました。

 

オリジナル

改修後

改修後の後姿

 

 



USA 

US NAVY

SSN-571 Nautilus

原潜ノーチラス    2020.09.01

世界最初の原子力推進航行を行った米国海軍潜水艦ノーチラス。

ウェスチングハウスが開発した船舶搭載用原子炉のプロトタイプS1W加圧水型原子炉を改良したS2W原子炉一基(13400馬力)からの熱出力(2次加熱蒸気)により2基の蒸気タービンと変速ギアに直結されたプロペラ2軸推進による原子力航行で水中23ノットを記録。

補助推進機関として各軸2基(計4基)のディーゼル機関も搭載されており、1954年1月21日の進水後はこの通常動力航行にて試運転航海を行い、一年後に臨界に達した原子炉機関による世界初の完全原子力航行に成功しました。原子力による北極海氷原(北極点)の潜航通過は特に有名ですね。

原潜(無論通常潜水艦も含む)では涙粒船体体、中心軸の一軸推進方式が当たり前の時代ですが2軸推進を採用したのもその旧船体形状も含め当時の通常潜水艦からの移行期を感じさせます。

そして原子力推進システムも黎明期。長期間の連続潜航(航行)にはメドを付けたノーチラスですが隠密性などは二の次でした。

現在の原潜では騒音源であったギアシステムを排して蒸気タービンを発電専用とし、この電力で電気モーターに直結したプロペラを駆動するターボエレクトリックが主流です。

ノーチラスでも一部の原子炉からの2次加熱蒸気を船内電力用発電タービンに振り分けていましたが、技術的にはこれを航行用機関にまで拡大させて航行時のエネルギ-効率、静音性に加えきめ細かい推進コントロールを得られるようになったと言えます。

このターボエレクトリック方式は水上軍用艦船での波及は少なく、逆に原子力ではないものの古くは一部の豪華客船、そして現代のクルーズ船においてその高い制音性から採用されてきました。

話がそれましたが本艦はその後1980年3月3日に軍務を解かれ、1985年から歴史的記念艦としてコネチカット州グロトンのthe Submarine Force Library and Museumにおいて一般公開されています。

 

<船体スペック:竣工時>

起工日/進水日/就役日   1952.06.14/1954.01.21/1954.09.30

基準排水量      2,980t

船長/船幅              97.5m/8.5m

最大速度               23.3knot

乗員数                          107名

 

このモデルについて

モデルは小さいですが1/1250スケールのプラ製ウォーターラインモデルです。

本艦のモデルは幾つか見かけますが船尾の垂直フィンが水上から出ていないこのモデルを選びました。ちょっと間の抜けた姿に見えますが実艦もこのフィンは水上喫水面下の高さしかありません。

セ-ルの艦番号571はもう少し小さいのでこれは手持ちの転写レタリング(白)があれば修正しようと思ってます。

後はセイルの潜望鏡等の附器機器類(ノズル/アンテナ等)ですがよく見るとちゃんとそれらのモールドが付けられています。

でも何せ小さい上にすべて格納状態。一本位は真鍮線を立ててやろうかなと。

 

さてさてこれで当館の1/1250スケールモデルによる原子力船展示コーナーもひとまず「黎明期編」が完了です。

後ろ姿

 

 

艦橋上面のモールド


CGM-9 LONG BEACH 

ロングビーチ 

世界初の原子力水上艦として1961年に就航した米海軍のミサイル巡洋艦「ロングビーチ:CGN-9」1万4200t(基準排水量)

細長い船体に直後に登場した世界初の原子力空母エンタープライズ:CVN-65と同様な大きな立方体型の艦橋に縦型:horizontally wide rectangularのAN/SPS-32と横型:vertical narrow rectangularのAN/SPS-33  で一組となるフェーズドアレイレーダーを4側面に張り巡らし、船体に比して少しアンバランス感はありましたがとても未来的フォルムの船としてデビュー。

しかしこの最新アンテナはまだ試験的な採用の域を出ず、故障率やそのメンテナンス性、実性能の低さといった運用面での問題が多く、1979年の大改修では全面撤去され通常型艦橋上の三次元レーダーシステム(AN/SPS-48)に換装されてしまいます。

兵装も当時軍部に蔓延しだしたミサイル万能主義の流れからかミサイル兵装のみで登場。船首部に射程50㎞の中距離対空ミサイル「TERRIA(テリア)」ランチャー2基、船尾に射程150㎞の長距離対空ミサイル「TALOS(タロス)」ランチャー1基を配置。ブリッジ後ろの中央スペースは初期にレギュラス巡航ミサイルの発射台とされていましたが、ここにはASROC多連装システム一基がおかれています。

その後、空軍でも問題になるミサイルのみの兵装の弱点に対して近接防御用に5インチキャリバー砲2基が追加されています。写真のモデルはこの当時のものでしょう。

デビュー当時の兵装も1978年から1985年にかけて行われた近代化工事で大きな変容を遂げます。後部タロスは二基のハープ-ン対艦ミサイル発射機に置き換わり、タロス管制レーダーシステムのあった位置に新たなレーダーマストが新設されています。

船首のテリアはスタンダードミサイル発射台に換装改造され、旧テリア管制レーダーは近接防御システムバルカンファランクスCIWS2基に。さらに1985年には船尾にトマホーク巡航ミサイル4連装発射装置の設置に伴なってハープーンは船首に移設されています。

推進力はウェスティングハウスの船舶用加圧型原子炉(C1W)を2基、タービン駆動2軸プロペラで30ノットの速力を誇りました。

一時期イージスシステム搭載艦への再改装も計画されましたがこれはキャンセルされ1995年3月の退役後永らく係船の上、2012年7月12日にスクラップへ。

 

<船体スペック:竣工時>

起工日/進水日/就役日   1957.12.02/1959.07.14/1961.09.01

基準排水量      15,540

船長/船幅              219.84m/21.79m

最大速度               30knot

乗員数                          1160名

 

このモデルについて

HANSAの1/1250スケールダイキャストモデル。

造形的に出来の良いモデルだと思います。

追加したのはメインデッキの塗装かぶりの修正、ボラードやライフボート等の追加塗装に加えて艦橋のフェイズドアレイレーダーパネルを少し目立たせるために船体基本色と色調を変えてみました。

最後に船首船体にMAXONのレタリング(ホワイト)で船体番号「9」を転写しました。

 

オリジナルモデル

 

 

改修版

改修版船首

改修版艦橋部


CVN-65 Enterprise  

エンタープライズ

世界初の原子力空母となる米国海軍原子力空母エンタープライズCVN-65(基準排水量7万5700t)。

原子力水上艦としては数か月の差ながらロングビーチに続く2番目の就航となった本艦は1958年2月の起工から約4年の工期をかけて完成し、当初エンタープライズ級原子力空母6隻の一番艦として計画されました。

しかし完成コストが高騰し、残り5隻はキャンセルとなりただ一隻完成した特別艦となっています。

2番艦キティーホーク、3番艦のジョン・F・ケネディーはこの計画キャンセルの決定から設計変更され、キティーホーク級通常動力艦として建造されました。

原子力空母として完成したエンタープライズはA2W水上艦型加圧原子炉八基を搭載し公試航海で約34ノットを記録しています。

また建造コストは高いもののこれだけの巨艦を燃料無交換で長期間常時航海(基本的には数十年とされています)させながら緊急対応時にはその高速性能を生かして短期間で多数の艦載航空機とともに海上基地として緊急展開できるという原子力艦ならではのメリットを軍部に強く印象付け、結局米海軍は原子力打撃空母群の整備に軸を戻し、今に至っています。

デビュー当初はキュービック状の艦橋とその4側面すべてに張り巡らされたAN/SPS-32と33型フェーズドアレイレーダー対システム、加えて天井にはインドの寺院のようなパゴダ型のレドームを載せてこれこそ未来の空母といった姿でお目見えし、衝撃を受けたものです(とはいえ先の原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチとともにこれらフェイズドアレイレーダー類はその故障率とメンテナンスコストから後の大改修時に取り去られてしまいます)。

2012年に退役、現在は生まれ故郷のニューポートニューズ造船所で解体を受けつつ、次世代のジェラルド・R・フォード級原子力空母にバトンを渡しました。

このフォード級空母3番艦として2018年8月24日に新エンタープライズ用ファーストブロック鋼材の切り出し式が同造船所で行われています。

退役したこのエンタープライズの解体は2019年現在も進行中で、完了予定は2025年とされています。

 

<船体スペック:竣工時>

起工日/進水日/就役日       1957.2.4/1960.9.24/1961.11.25

基準排水量/満水排水量  7万5700t/9万3284t

船長/船幅                             336m/76m

最大速力         34knot

乗客数/乗員数                      約4600名

 

このモデルについて

Triangeの1/1250Scaleプラ製モデルです。

大型モデルながらプラ製ゆえに非常に軽く、また全体の造形は当時のエンタープライズの雰囲気をよく出しています。

残念ながら艦橋上部のレーダー類、特にパゴダドームがのっぺらぼうで、周囲にずらっと並ぶアレイを何らかの形で再現してやりたいところ。

また当時船首発艦デッキ左右に並んでいた起倒式アンテナ群を真ちゅう線で再現するのもいいですね。加えてフェーズドアレイレーダー面の色調を少し変えてみましょう。

これらの改修計画が完了しましたらまた写真をアップします。

今回はモデルオリジナルの写真のみを。

 

船尾着艦デッキを望む

 

 

艦首発艦デッキ蒸気カタパルトとアングルドデッキを望む

独特な艦橋構造


ディテールアップ作業

デッキの各部に墨入れ(ホワイト/グレー)を実施し、デッキのキャットウォーク横に起立型アンテナを付けました。モデルにはアンテナ基部のモールドがきちんと設けてあります。

船体側面の格納庫シャッターはそのモールドを目立たせるためにメタリックグレーで塗装。

次は艦橋部に手を加えていきます。

パゴダドームのアンテナアレイ群は線幅パターンの異なる縦縞のスクリーントーンを切り出して巻き付けてみました(ビックワンガム式だね)。

艦橋の4側面に張り巡らされたフェーズドアレイレーダー対は竪型のAN/SPS33追尾レーダーパネルのモールドはそれなりの造形はあるのですが横型のAN/SPS-32索敵レーダーはないのでテープを切り出し、貼り付けています。

また当時の写真を参考にデッキ側の上部にフライトモニタリングルームを追加して艦橋上部のアンテナ類も適当に追加。

少しはエンタープライズ就航時に見えるでしょうか?

あとは艦橋の基部に65のレタリングをすれば.........(Maxsonのナンバリングパターンで適当な大きさのものがストックにあるかみつけなくちゃ)

 

今回おまけとして船長が300mを越える豪華客船のCunardのQueen Mary2とフレンチラインのFranceと並べてみました。

 

デッキの墨入れ、起立アンテナの追加

 

艦橋の改修状況

格納庫の扉のモールドも


 

 


American Export Isbrandtsen Line

NS SAVANNAH   

サバンナ

世界最初の原子力水上商船サバンナです。

船の経歴は6号館#5展示室内の原子力船のキット展示スペースでまとめていますのでそちらをご参照ください。

このモデルはTri-Angの玩具モデルですがハッチ以外の塗装は一切ありません。

全くののっぺらぼう。

ただ船体の少し強調されたプロポーションは良いものですし、軟質プラ製ですが3つのデリックブームの複雑な逆三角マストも良くできてますので手を加えれば貴重なサバンナのモデルに変身すると思います。

この船の1/1250スケールのモデルは以前CaratかCSC製の非常に精細なものを見ただけです。最大の欠点は喫水線部が寸足らず(船体が沈み込み過ぎ:貨物満載ならこの程度まで下がるのか?)なところです。

 

このモデルについて

TriAngの1/1200スケールのダイキャストモデル。

追加改修点は以下の通りです。

1)デッキを多少黄緑がかったグリーンで塗装。

2)ハッチは既存のグリーンからグレーに変更

3)船体上部のグリーンラインを0.5mmのアートラインで表現

4)喫水線部のレッドを同じく0.5mmのアートラインで表現

5)ブリッジ窓及び原子炉アクセスデッキの前の船楼にある庇を0.7/0.4の真鍮線を

  瞬間接着剤で固定し再現。

6)デリッククレーンのブーム部左右3カ所計6個を真鍮線とブラ材で製作し追加。

7)マスト類やクレーンブームはシルバーで塗装

8)オリジナルのSAVANNAHのデカールは不要なので除去

9)ブリッジ、ブールデッキ前のラウンジの縦長窓と大きめな円形船窓は個々

  スクリーントーンを切り出して貼り付け。

10)両舷の小さめな窓は水性ゲルペンで手書き

11)船体の原子力マークもペンで手書き

12)第一デリックブームの先端マストはカット

13)船首にポールを真鍮線で再現

こんなとこでしょうか?

 

オリジナル全形

改修後全形

オリジナル中央部

改修後中央部

 

 

自作クレーン

改修後船尾から


改修後船首部



NS SAVANNAH Carat Ver.

CARAT社の1/1250スケールダイキャストモデルのNSサバンナです。

原子力商船サバンナのダイキャストモデルは数も少なくこれが最高レベルのものではないでしょうか?

今はお店をたたんでしまった米国のMorning Sunshaine Modelのwebshopにおいてほんの短い期間在庫掲載されていましたがすぐに売れてしまい、後悔したものでした。

これは今年初めにセカイモンに出品されているのを見つけ、だいぶリーズナブルな価格で落札できたものです。

とはいえ若干のデッキ塗装の被り等も散見され、その修正と船体ハウス中央ラウンジの窓のみグレーの墨入れをしてあります。

 

オリジナルの船首

改修後の船首

 

 

オリジナル中央部

改修後の中央部

オリジナル中央部

改修後ハウス部

オリジナルの船尾

オリジナル船尾

改修後船尾



West Germany

German-built trade and research vessel to test the feasibility of nuclear power in civil service

NS Otto Hahn     

オットーハーン

米国の原子力商船NSサバンナや日本の原子力試験船むつにおいても話題に上げた西ドイツ(当時)初の原子力貨物船 オットーハーン 1万6871総tです。

名前の由来は原子核の分裂を発見しノーベル化学賞を受賞したドイツの物理化学者Otto Hahnから。

1963年起工、5年の歳月をかけドイツ初の水上原子力試験船として竣工した同船は

2年間の試験航海の後に1970年に鉱石タンカー/貨客船として商業運航を開始します。

1979年には原子炉を撤去され通常動力に換装されるとともに船首楼は船尾部に移設され、全くイメージが異なるコンテナ船に改装されています。そのあとは転籍改名を繰り返し、2009年に廃船スクラップに。

現在ドイツのMaritime Museumの庭にこの船のオリジナルファンネルのみがモニュメントとして移設されています。

 

このモデルについて

HANSAの1/1250スケールダイキャストモデルです。

船窓の墨入れ、船首の短マストを追加してデッキ塗装の被りを修正後に最後にボラード等を塗装しただけです。

最後の写真は原子力商船の世界三姉妹の揃い踏み。

船首から

船尾から

 

 

原子力商船揃い踏み


Otto Hahn  Carat Ver.

世界の原子力船展示コーナーで先にHANSA社のダイキャストモデルをご紹介しましたが今回はCarat社のモデルです。

さすがに芸の細かい仕上がりです。

若干の塗装剥げや被り、歪んだ手すり等の修正をしました。

こうしてみると船首楼を除けば先輩のサバンナの影響があることが判りますね。また日本のむつもこのオットーハーンの影響を受けている様な気がしてなりません。やっぱり遠い従姉妹なのかな.........

 

船首部/船首楼

船体中央原子炉格納部

 

 

船尾部



Japan 

日本原子力船開発事業団

MUTSU   

むつ

日本が世界三番目の商用原子力船*1として建造した「むつ」8242tです。

本船は実験船で客船ではありませんが日本の造船史上外せない船でもありますのでここで展示します。

日本初の商用原子力船開発計画が産声を上げた1960年代はまだ世界的に夢の原子力船と言われその有用性が謳われていた時代でした。

船体は石川島播磨重工業、原子炉は三菱重工業に任され1970年には完成し、2年後に核燃料が挿入されました。

しかし、日本独特の核アレルギー的風潮に加え、政府の原子力行政の不透明性から「むつ」は原子炉試験、処女航海の予定すら立たない状況が続きました。

1974年、反対漁民の包囲網の中を母港大湊埠頭を強行出航して洋上での原子炉臨海試験を実施(これは政府と地元行政との間にて了解を取り付けていました)すべく原子炉に火をともします。

しかし不幸なことに原子炉の遮蔽リングに不備があり(設計ミスとも言われている)僅か1.4%出力時に放射能(中性子)漏れが起こり原子炉を停止。

この事故自体は比較的軽微な事象とされましたがこの間の経緯も重なって「むつ」は修理の為の帰港すら地元から拒絶される事態にまで発展し、さまよえるオランダ人の如く洋上で2ヶ月間あてのない漂流を続けます。

なんとか修理のみの帰港を認められますが直ちに原子炉は封印され4年後にやっと建造元の石川島播磨での修理が実施されるとともに母港を大湊から関根浜に移すことが決定されました。

先の不本意な事故から16年の歳月が流れた1990年にむつは洋上試験に再チャレンジします。今回は100%出力による原子力動力航行にも成功し、翌年約1年間をかけて遅ればせながらも予定の試験プログラムを終了させました。

その後「むつ」は原子炉を取り外されて通常動力(ディ-ゼル)船に大改修され、海洋調査船「みらい」として再デビューし現在も海洋調査に活躍しています。

余談ですが「むつ」の原子炉は新母港となったむつ市関根浜に建設された

「むつ科学技術館」において世界初の試みである実原子炉の密封保管状態での展示公開がされています。

 

結果論からすれば「むつ」が解役される時にはすでに商業原子力船の有用性の低さは世界的に定着しており、今では潜水艦と空母、ロシアの砕氷船や砕氷コンテナ船という特異な役務用途でしか建造されていません。

とはいえ不幸な生い立ちと不運がついて回った「むつ」が残した技術データと経験は日本の貴重な財産ではないかと思います。

 

*1)1970年の完成年を起点とすれば原子力水上船として砕氷船レ-ニンを

  含めて4番目、米国巡洋艦/空母等の原子力水上艦船を含めれば8番目)

  一応海事関連の書籍で通説となっているのは以下の通りで、順番は就役

  (竣工)または処女航海の日時(資料等記載年)による通し番号です。

 

   参考:世界初の原子力潜水艦(水中船)は米国海軍ノーチラス    1954.09

   1.世界初の原子力水上船ソ連海運局の砕氷艦レーニン         1959.09

   2.世界初の原子力水上艦米国海軍ミサイル巡洋艦ロングビーチ     1961.09

   3.世界初の原子力空母米国海軍エンタープライズ           1961.11

   4.世界初の原子力商船米国連邦海事局のサバンナ           1962.08

           5.米国海軍ミサイル巡洋艦ベインブリッジ                1962.10

           6.米国海軍ミサイル巡洋艦トラクスタン                 1967.05

           7.西ドイツ原子力実験商船(後正式に鉱石運搬船として運行)  1968(1970)

 

このモデルについて

Helvetiaの1/1250スケールのレジンキャストモデルです。

製品の展示写真を見たときはあまりいい出来のキットとは思わなかったのですが当船のキットとしては貴重でしたので購入しました。

届いてみると作りも細かく塗装ミス?を直せば出来の良い「むつ」になるかもと期待しました。

22/39は型取り39個中の22個目といった意味でしょうか?

透明レジンのキャストは底から光を当てることで上手く塗装すればライティング効果も出せるかもしれませんね。

まず船体が紅一色(明るいところではオレンジ系に見えます)なのでここは「むつ」おなじみのピンクの船体に白ライン一本(確かにオレンジ系で塗装されていた写真をみたこともありましたが)に変更しました。デッキは全面グリーンに。

ライフボートは白のときもありったようですがここはオレンジ系のレッドに塗り替えました。

貨物ハッチはグレーからクリーム/タンに替えて、船首のクレーンも淡いクリーム色に。

まず船体の塗り直しから取りかかったのですが、このキットの塗膜も水性系でアクリル樹脂塗料を重ねて置いた途端にゲロゲロに(ゲッ!)。

オリジナルのモデルは透明キャスト樹脂全体にまず水系のフラットホワイト塗料を厚塗りして船体部分を赤に(その他の部分も)薄塗りしてありました。

仕方なく、船体部だけに溶剤を筆塗りしながらティッシュで拭き取り、残りの細かい部分は綿棒に溶剤を含ませて拭き取っていく方法で既存塗膜を除去しました。

水系のピンクが手持ちの中になかったのでここはアクリル塗料Mr.Color 63で再塗装しました。

船体の細い一本のホワイトラインは0.5mmのアートラインテープ処理で再現しています。

デッキは水性塗料のグリーンと艶消しホワイトで筆塗り塗装にて処理しました。

ブリッジに墨入れしてその上のデッキにアンテナポールを立てて「むつ」の勇姿の完成です。

 

2015.09.17 追記

比較的鮮明な写真が入手できましたのでそれを参考に追加改修実施しました。

船首トップのアンテナを3本形状に。

船首クレーン操作室と船首楼局面の窓をアクセントとして追加。

船尾マスト(排気管)の黒色部分は鉄骨組構造(モデルにも痕跡はあります)ですがここはこのままとしておきました。

 

オリジナル

改修後

オリジナル

改修後

オリジナル

改修後

 

 

製品情報?

船体塗膜の除去

琥珀色透明樹脂

製の船体