オランダの客船


HolLand America Line(HAL)

SS Statendam(Ⅲ)

スタテンダム

HALが1929年に北大西洋定期航路に投入した2万9500tの豪華客船スタテンダムです。

同社が所有した同名船の3代目に当たりますが就航までにはいろいろ紆余屈折がありました。

まず1914年にHALは3万1000tの若干大き目な3本ファンネルの船体、船尾がウンタースタ-ン型のスタテンダムⅡを発注しましたが、完成間際の1917年に英国政府に徴用され、HALではなくホワイトスターラインの船として1917年に就航。その翌年にドイツのUボートの魚雷攻撃で沈没してしまいます。

この代船として建造されたのがこのスタテンダムⅢです。

この船、なぜかタイタニックやブリタニックの匂いがすると思いましたらそれもそのはず、造船所はあのタイタニックを建造したベルファストのハーランド&ウォルフなのです。Ⅱも同じでした。

進水に漕ぎ着けた段階で米国が移民入国を制限したためにHALは船客需要が低下すると判断。艤装工事を一旦中断します。

その後船体をオランダに回送して工事を再開。やっと1929年に就航となりました。

優秀で使いやすい船と評判も高く定期航路で活躍しましたが第二次世界大戦勃発によりロッテルダムにて係船中に戦禍の巻き添えとなり、火災による大きなダメージを受けてスクラップになってしまいました。

 

このモデルについて

CMKR社の1/1250スケールのダイキャストモデル。

購入時にマストやデリックブームの塗装ダメージが大きく、また塗料が厚塗りされていたため修正塗装は諦め、ブーム部の塗装をリムーブして再塗装しました。

船体のオレンジイエローの細いラインと船体塗り分け部を修正。

古い写真を参考に船首アンカーをカッパ―、フォアマストの見張り台を白に塗装。

ブリッジ及び船体舷窓の墨入れと天井スカイライトも銀で塗装。

等を実施してあります。このモデルもあとはデッキの塗装ですがカラー写真が残っていません。ウッドデッキだったはずですからタンあたりで塗装するしかないでしょうね。

(おっと船首のクレーンが曲がってる!)

 

オリジナルモデル

オリジナルモデル

改修後


SS Nieuw Amsterdam 

ニュ-アムステルダム

同社の同名船としては歴代2番目となるニューアムステルダム 3万6000tです。

1938年の処女航海時は黒い船体に白のハウスデッキ、黄色にブルーと白の3本ラインを冠した同社カラーの2本の煙突をバランスよく配したオーソドックスな姿でデビュー。その30年後に船体をブルーグレーに塗り替え、船室内を完全エアーコンディショニング装備としたクルーズ船として再デビューしました。もともとモダンなデザインの客船ゆえにシックな豪華クルーズ船として活躍しました。

 

モデルは写真1の様に塗装はボロボロでマスト類は一切なし。大事なファンネルも後方がちぎれて根本部しかないといった状態。元はCMKR社の出来の良いメタルモデルですから900円弱という落札価格はまだ出品が少なかった時期を考えれば、めっけものだったかもしれません。

届いたモデルをいつもの通り洗浄処理をしましたが、塗装の傷みが激しいので今回はオリジナルの塗装を全面剥離して完全リニューアルと決定(写真2)。

パウンドケーキを焼く型焼き器内で塗装剥離液に一日漬け置きし、浮き上がった塗膜を柔らかい真鍮金ブラシで丁寧に除去。船窓に残った剥離塗膜は爪楊枝で丁寧に除去し、再度新しい塗料希釈溶剤に2時間程度つけて船体を乾燥。

その上からメタルプライマーを吹き付け乾燥させたものが写真3です。

今回船体塗色としてはブルーが強すぎた感も......。もう少しグレー系の方が本船塗装色に近く、シックな仕上がりになったかな?

次いでファンネルの調達とHALラインの塗装です。

ファンネルはハセガワの日本郵船シリーズでは形と大きさがいまいち。

新田丸のファンネルは形状的にはなんとか流線型に近づけられるのですがなにせ大きくて..........

今回はネットでゲットしたMS Europeのダメージモデルを調達しました(写真4)。

マスト類は新田丸のものを流用し、デッキの細かい塗り分けと船窓の墨入れを施してとりあえずミュージアムドックから出港(写真5)。

手間はかかりましたが出来としてはまあまではないでしょうか。

 

写真1


写真2

 

 

写真3


写真4

写真5


SS Statendam 

スタテンダム

HALが1957年に大西洋定期航路に就航させたSS Statendam(Ⅳ)2万4294総tです。

HALは数年前に就航させた1万5000t級Ryndam(リンダム)とMaasdam(マースダム)姉妹船によるツーリストクラスを主体としたエコニミー路線で成功を収めたことから、これらの船をベースにしたさらに大型船の建造を計画。船名を先送りして処女航海直前までNo.753船と呼んで建造を進めます。

1956年6月の進水式から5か月後に最初のトライアル航海に臨んだNo.753船は新しく採用したボイラー・エンジンに不調を起こしてすぐに帰港、再度ドック入りとなってしまいます。

1957年1月14日に再び公試運転に臨んだ753は良好な成績を収めて無事帰港。

その5日後の19日に500人の招待客に若きベアトリックス王女(現オランダ女王)の参列を拝して記念航海に出航。この公開時に王女より正式にスタテンダムと命名されて祝福を受けました。しかし次のスタテンダムの処女航海は散々なものでした。

航海中に猛烈な嵐に遭遇して乗客の多くが船酔いに苦しみ、また目的地NY港に初入港した時には恒例の熱烈歓迎を受けると思いきや、時悪く港湾労働者のストライキ中でタグボートも水先案内人も出てこない始末。

船長はこのような状態でのNYピアーへの接岸を断念し、事情に詳しいHALの社有ドックにこの大型船を接岸することを決め、なんとか自力で着岸させたと言われています。

HALの先代豪華客船群に比べて極めてモダンで優美な船容をもつスタテンダム(Ⅳ)は当初から大西洋定期航路客船とクルーズ船を兼務できる船として2クラス制(ファーストクラス84、ツーリスト867)を採用しており、この処女航海後にはツーリストのみの1クラス制に切り替えてNY港を起点とする3回のカリブクルーズを実施し、3月に母港ロッテルダムに帰港します。

その年末までに実施した10回の定期航路往復と2回のカリブクルーズは毎回満室という盛況ぶり。エコノミー路線のツーリストクラス船と言えども他船のファーストクラスに近い設備を導入しHALが満を持して世に送り出した豪華客船ですからその面目躍如といったところでしょう。

その後110日世界一周クルーズ等も実施するなど順風満帆だったこの船にも定期航路衰退の波が寄せますがクルーズ船としての評判も築き上げていた船故に1986年までHALの看板船の一隻として在籍続けます。

1971年、HALがフラッグとロゴを変更し、太平洋地域へのクルーズサービスも重視することを決断し、スタテンダムも完全クルーズ船への改修を受けてオレンジのファンネルに旧来のグリーンを挟んだイエローの3本ラインを模したロゴを配して、船体もグレーから白とロイヤルブルーの現在のHollandAmerica Cruise仕様に。

その後4年間フランスのPaquetにてRhapsodyに、次いでRegency Cruisesで10年間Regent Starと改名されクルーズ船としてサービスを継続しますが最後はギリシャに売船され永らく係船放置状態のまま2004年にインドでスクラップになっています。

 

このモデルについて

HANSAの1/1250ダイキャストモデルです。

ファンネル、船体の塗装はHAL仕様なのですが船首及び船尾のデリックが撤去された姿は1986年にRegency Cruiseに売船後、改装されたRegent Star当時のもの。

多分一度金型改修されたモデルのままにスタテンダムとしてHAL仕様の塗装にして再販されたものでしょう。

純白に黄色の帯のRegent Star当時に再塗装するか、再度船首と船尾にデリックを追加してスタテンダム時代に戻すか……..

ここはやはりHALのスタテンダム時代に戻すしかない!とまずはデリックのポールがあった場所の小さな電動クレーンを撤去し、ピンバイスで穴あけ。この小さなクレーン上のものはプラパーツでした。

1)船首、船尾のデリックを再生

2)船体グレー部に0.5㎜のイエローラインを追加

3)ファンネルの上部のグリルと排気筒を追加

4)船窓等の墨入れ

5)全体的なデッキ塗装被りの修正

を施しました。

 

オリジナルモデル

改修後のモデル

 

 

オリジナルモデル

改修後のモデル

オリジナルの船首

改修後の船首


MS Rotterdam 

ロッテルダム

今回は代々オランダ第二の都市の名前を受け継いできたオランダ・アメリカラインの豪華客船Rotterdam:ロッテルダムⅣ。歴代の同名船の中でも特に名船の誉高いのが1959年建造のこの船でしょう。

総トン数では4万t弱の中型船ですが、海上の美術館と言われたほど高価な美術品や工芸品のコレクションを船内に配し、高級木材やオランダのデルフト工芸タイルを多用したエレガントな内装は姉妹船をはじめ同社歴代船に採用されているコンセプトです。また本船は本国オランダで建造された最後の大西洋横断定期航路用豪華客船でもありました。

定期航路衰退にともないホランドアメリカラインが本社を米国に移してクルーズサービスに特化するに伴い本船もカーニバルクルーズに移籍して本格的なクルーズサービスに転向。この際にシックなグレーの船体はロイヤルブルーに変更されました。

その後は引退して母国オランダで浮かぶ美術館になる案も浮上しましたがこれは立ち消えとなり、グレーハインドバスで有名なプレミアクルーズに買い取られてRenbrant;レンブラントと改名して船体を真紅に染めたBig Red Boatの一員として親しまれました。

その後、2000年プレミアクルーズの倒産で往年の名船ばかりの同社所有船のほとんどはスクラップへの道をたどりましたが、#3展示室にて公開中のオセアニックは日本に、本船は故郷のホームビルダーである造船所に買い取られ係船されていましたが現在ロッテルダム港で浮かぶ豪華ホテルとして第三の余生を送っています。めでたしめでたし。

 

このモデルについて

モデルは初のConrad社の1/1250スケールダイキャストモデル。

値段の割に出来の良いモデルです。

一部のデッキ塗装のみが著しく雑であまりにその他の部分との差がありすぎの感もありますがそれを除けばほぼ完璧。

船体がロイヤルブルーで仕上げられているクルーズ船時代の仕様ですので、船上の衛星通信レドーム群を設置してやりたいところです。

定期航路船時代のシックなグレー色船体の場合は設置してはダメですよ。

このConrad社のモデルはお手頃価格ですので2隻購入してそれぞれを再現してみました。

1)先ずはタンで塗られたデッキ塗装のハミ出した部分の大修正。

2)大・中・小の四つの衛星通信レドームの追加作業。

   これはガンダム等のロボット関節可動用のボールジョイントだけを別売してい

   る追加パーツがありますのでこれを利用しました。

3)船窓部の墨入れ

4)最後にクレーンデッキの先端部を一部焦げ茶塗装にして完了です。

     船首には船名もきちんとレタリングされていてこれくらいで十分でしょう。

5)定期航路船時代は船体をグレーに塗装し直しました。

 

このCONRADのモデルは米国Morning Sunshine Modelsで常時購入可能でしたが昨年暮れ(2014.12)にお店をたたんでしまいました。在庫のラインナップも多岐にわたっていて非常に良いお店でしたが残念です。

 

改修前のオリジナル 

改修前の後姿

 

 

定期船時代へ

定期船時代後姿


MS Prinsendam 

プリセンダム

HALの3万8000t級クルーズ船プリセンダムです。

元はRoyal Viking Lineが1988年に就航させたRoyal Viking San。

キュナード、シーボーンクルーズと渡り歩き2002年、キュナード、シーボーンの親会社となったカーニバルの意向でHALの船団に加わりました。

すべてのオペレータにおいて洗練された最高級のサービスを提供するラグジュアリーシップとして称賛されてきました。

現代的なデザインの船体ながら高級チーク材を敷き詰めたプロムナードデッキに代表される様に古き良き時代の客船の雰囲気があちこちに感じられる船との評価が高い一隻です。

 

このモデルについて

CMKR社の1/1250スケールのメタルモデルです。

ご覧の通り船体アウトサイドに並ぶテラス付コンパートメントの一つ一つにきちんと窓とドアのモールドが施されています。

まだ手つかずの一隻ですがデッキの追加塗装はしてやりたいところです。

 

後姿

 

船体前部

 

 

船体後部

 


MS Prinsendam改修完了

Yutubeにアップされていた同船がゆっくりと航行している動画を参考にしてデッキ色や衛星通信システムの追加ケ所(下記写真の黄色の〇)を確認しました。

デッキは焦げ茶に近いウッドブラウン。

中央部右舷側(レーダーマスト斜め後方)に大型レドームが追加されています。

リド・プールデッキ前の半円筒型ラウンジの屋根(灰色矢印)は全面白の時代(前期)と黒屋根にスモークグラスが規則的にはめ込まれている時代(後期?)があったようです。

 

船首より

 

 

改修ポイント

後部サンデッキ


Volendam 

ボーレンダム

ホランドアメリカラインが1999年に就航させたロッテルダム級クルーズ船の2番船MS Volendam 6万900tです。

クラス命名船のロッテルダムと4番船

アムステルダムはファンの多かった旧ロッテルダムの面影を残したのか2本ファンネルですが、このボーレンダムと3番船ザーンダムは一本の太いファンネルに変っています。

基本的に1993年から就航を開始した5万5000t級のスタテンダム級のアップグレード版のような船です。

元々6万t級のクルーズ船建造計画がこのスタテンダム級の建造前に存在していましたがHALがカーニバルの傘下となり、カーニバルがこの6万t船を中止させて新たに進めたのがスタテンダム級でした。

その後クルーズ需要が順調に増大し、さらに船容を拡大した6万t級のロッテルダムクラスの追加建造が決定され、この2クラスの船はほとんど同じデザインを踏襲しています。

 

このモデルについて

メーカー不詳、材質不詳のフルハルモデル。長さ30cmですので大きさは1/790位(実船長237m)でしょうか?

材質は陶器でもレジンやプラスチック(レーダーマスト等の一部除く)でもないようで、重さからするとやはり鋳物製か堅い木材かもしれません。

船体塗装は非常に美しい光沢仕上がりで、デッキは木目調のプラスチックシール張りでした。

一番の難点は上部デッキ中央の天井開閉式全天候プール(マグロドーム)の天井窓が透明な硬質塩ビ?シートの平板に窓の白枠を模したデカ-ルを張っただけのものが2枚粘着テープでちょこんと載っているだけというお手軽状態。

ここはこの透明板を取り外し、別途透明プラシートで片側3枚(計6枚)の短冊パーツを切り出して白のアートラインテープとスクリーントーンで枠を再現した後、立体的に折り曲げ加工したものをドーム開放状態として再現しました。

あとはファンネル前の足りない衛星通信レドームを適当な大きさのガンダムのポールジョイントを白で塗装したものを追加し、ファンネル基部の飾りスリット状構造物を1段空かしで黒塗装(白と黒が交互に重なるように)してあります。

最後にレーダマストやポール類も真鍮線等で適当に追加してあります。

後は窓の墨入れですが、ブリッジ周りだけ水性ペンで入れてみましたがこのモデルのベース塗膜ならラッカー系シンナーにもちそうですのでラッカー塗料での墨入れにチャレンジしてみます。

 

追伸

ラッカー系塗料による墨入れは大成功でした。

 

最終改修状態後姿


マグロドームや

レーダーマストの改修

 

 

ファンネル部の修正


後は船窓の墨入れのみ




Europe Canada Line:                                                                 Holland America Line  & Royal Rotterdam Lloyd

MS Seven Sea

セブン・シー

生粋の豪華客船が戦時中に空母に改造された例は多いのですが、この「Seven Sea」は退役した空母を買い取って定期航路・クルーズ客船に改造した例です。

米国サン造船所で建造されたC3規格貨物船の一隻「Mormacmail:モーマックメール」を米海軍が試験的に小型の護衛空母に改造し、ロングアイランドと命名(7800総t+9400tの航空機等の兵装搭載可能)。

船団護衛空母という新分野の礎を築くとともに大きな戦果を上げたこの空母を戦後のオークションでスイス系民間企業Caribbean Land & Shippingが落札して貨客船に改造。Nelly:ネリーと命名して民間航路に投入します。

その後、2クラス制(1等20名、ツーリスト987名)クルーズ船に再改造されて船名をセブン・シーに。 船体前方部の延長、船首楼の拡張といった大幅な船体の改造と内装のグレードアップ改修を受けて排水量は1万2575tになりました。それでもクルーズ船としては船楼が低く平坦な本船の独特な形状はこんな経緯によります。

北大西洋航路に投入された同船はHALとLloydが共同出資したEuropa Canada Lineに売却され1953年5月からは北大西洋横断航路だけでなく欧州-豪州間の本格クルーズサービスも開始。

1963年以降は洋上大学としても活躍しましたが1965年7月17日に発生したエンジンルームの火災を契機に1965年船舶としてのキャリアーに終止符を打ちます。

最後は船体をロイヤルグレーに塗り、ロッテルダム大学の寮として使われてきましたが1977年5月に老朽化によりスクラップとなっています。

 

このモデルについて

アルバトロスの1/1250スケールダイキャストモデルです。

非常にできが良く、デッキやファンネル、船体の塗装も丁寧です。

デッキ上の低い船楼等も細かく再現されていいて好感の持てるモデルでした。

 

船首から

船尾から

 

 

船首部

船体中央・船尾部